白いしるし作者:西 加奈子/ 原作:/ 62点
■アートと恋愛と
「白いしるし」は芸術への感情と恋愛感情を結構クールな温度で描いた恋愛小説である。10年前ならともかく、様々な人生経験をこなし、結婚し、子供までいる今となっては、正直ありきたりの恋愛小説ってのはもう興味の範疇外。なので、この手の作品の点数が低めになるのは、一個人の独断と偏見で評価している書評サイトとしては避けようがない現象としてご了承いただきたい。 …のだが、本作品がありきたりかというと、そうでもないなという感想。青臭くて歯の浮くような恋愛でもない一方、不倫をなんとも思わないようなドロドロした感じでもない、独特のバランス感は昨今の江國香織とかより随分自分の肌に合う感じ。 男女の感情と芸術的センスへの憧れってのは、似て非なるものである。が、それって逆に言えば、非なるものだけど酷似してるんだよね。
一気にぎゅっと読み進められるテンポの良い恋愛作品なので、このジャンルが読みたい時に手に取るにはお薦め。読み終わってから振り返ると、「白いしるし」以外のディテールがあまり記憶に残ってないのだけれど、これは物語があっさりしているせいだろう。それをいい方に評価するか悪い方に評価するかは読者ごとにハッキリ分かれると思う。 Copyright barista 2010 - All rights reserved. |