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DIVE!!
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■マイナースポーツを巡る物語
DIVE!!はダイビングを取り扱った青春スポ根（？）作品である。ただし、ダイビングといってもアクアラングをつけて南の海に潜るわけでもなければ、飛行機からパラシュートを付けて飛ぶわけでもない。本作品が取り扱うダイビングとはいわゆる「高飛び込み」の事である。
「高飛び込み」と言われても余りどんな競技なのかピンとこない人も多いのではないかと思う。何故なら非常にマイナーなスポーツだからた。フィギュアスケートと同じく設備にお金がかかる高飛び込みは簡単にはメジャースポーツになり得ない。更に言えば、高所から飛び込むという競技の性質上、危険性が高いのもその原因の１つだろう。
何気なくフィギュアを似たものとして取り扱ったことについて「メジャーじゃないか」と感じた人もいるだろう。だがちょっと待って欲しい。自分の身の回りにフィギュア経験者がどれだけいるだろうか？一部の実力ある選手がメダルを量産しているおかげで、TV露出が多く、メジャースポーツであるかのような印象はある。だが選手人口は思いの他少なく、有名なリンクがどんどん閉鎖しているのが現状だ。
さらにいうと先日、高橋とマーヴィンはペアで銅メダルをとったのだが、彼らは国内では１位で最下位である。国内でペアをやっている選手は彼女たちだけなのだ。これはペアがフィギュアの中でも非常に危険度が高いことに起因するという。
そんなわけでこのDIVE!!という作品は、いわゆるスポ根小説としてもよくできているが、マイナースポーツで頑張る選手、そしてそれを盛り立てようと頑張る協会の人々の心中を描いた作品として非常に優秀なものになっている。マイナーな競技の選手の交通費は自前だし、世界一になっても賞金はない。まだまだマイナーの域を脱しきれてないバドミントンをやっている身としては、そういう目線でもかなり面白い作品だった。
この物語の実質的な主人公は３人の少年・青年である。１人はずっとメダルを目指してストイックにできる努力を積み重ねてきた、日本で二位のサラブレッド。１人は先天的才能をコーチに見込まれているものの、お調子者でまだまだ本気になったことのない少年。最後の１人は屈強な体を持ち、孤島にて儀式として高飛び込みを繰り返してきた男。彼らは同じコーチの元、オリンピック選手として選考されるべく、それぞれの思いを持って研鑽に励むこととなる。
DIVE!!は全部で４巻構成となっており、１巻から３巻まではそれぞれの主人公たちがいかに「本気」を手に入れるかの描写に費やされる。そして最後の４巻で彼らが挑む選考会を模様を描き、彼らの努力がいかなる結果を迎えるのかを持って本作品を結ぶこととなる。
面白いなと思ったのが、この１〜３巻が予定調和的流れになっていない点。
４巻にたどり着いた時には、「良かったここに辿りつけて」という思いだった。
４巻は視点を各主人公たち、そしてその周囲の選手のそれに変えつつ、NHKの記録映像化のごとく淡々と描かれる。試合展開の描写で間が持つ球技と異なり、一瞬で水中に消えてしまう高飛び込みの競技中の描写だけで物語を構築することには無理がある。そこで本作品の場合、選手たちの気持ちを中心に描写し、それがいかに点数に結びついたかの繰り返しで物語を構築しているのだ。作者は第４巻の描写に相当苦労したのではないかと思う。
漫画化や実写映画化もなされた本作品は、とにかく漫画のようにサクサク読めるので、軽い読書がしたい時なんかにお薦め。ただ飛び込みのシーンを脳内に映像化するのが苦手な人は、作品を地味に感じてしまうかも。高飛び込みに馴染みのない人は、一度ネットで映像を何本か見てから読むと、想像力が強化されて二倍楽しめるのではないだろうか。
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