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レヴォリューションNo.0

作者:金城一紀/ 原作:/ 70点
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価格:1,155円(税込、送料別)

■映画脚本のように端的でストレートな作品

 

「レヴォリューションNo.0」はある少年たちが、とんでもない学校の行事において決行した、ある作戦の顛末を描いた青春作品である。モー娘とは全く関係がない。物語は単一の主人公視点で描かれているためわかりやすく、非常にテンポもよい。なので、日ごろ読書の習慣のある人なら1時間もあれば読み終わってしまうだろう。じゃぁ内容が薄いかと言うとそんなことも無くて、いろいろと考えさせられてしまう作品である。

 

以下、物語の大まかな方向性について説明。

 

物語の冒頭に「42」という数字が語られる。「人生、宇宙、すべての答え」の事ではない。主人公たちが通う高校に合格するために必要な偏差値である。彼らの通っていた学校は、非常に偏差値の低い生徒が集まる、私立の高校だった。そして、不思議なことに、何故か彼らの学年は例年より200名も余分に生徒を合格させたのだった。必然的にクラスには劣等生たちがあふれかえっている。

彼らの学校では某ヨットスクールのごとく、体罰が横行している。これがマンガかよってぐらいに過激なのだが、よくよく考えると自分が高校ぐらいの時代には、進学校でもこんなモノだったような。

閑話休題。ある日彼らは「合宿」へと連れて行かれる。合宿所は高い壁に囲まれた監獄のような場所で、夜間の脱出は不可能。合宿内では「4時間以内に山を走破」など身体的にかなり厳しい課題ばかりが出され、それは目標をクリアできないものがいれば、チームメンバともども体罰の対象となるというとんでもないルールで実施される。そして、その条件をクリアできる人間など一人もおらず、にも拘らず翌日にはこの目標は翌日には更に厳しくなるのだった。

 

果たして学校は一体何を目的にこんな合宿を始めたのか。また、そこでとんでもない生活を強いられている主人公たちは一体どうなってしまうのか。これが物語の主軸となる。

 

これね、冷静に考えるとめちゃくちゃなのさ。いくら馬鹿ばっかり集めたからって、その両親が馬鹿ばっかりとは限らないわけで、普通に考えたら早々に事件化してしまう。学校側の思惑がうまく行ったとしても、そのからくりには直ぐ気づくだろうし、途中登場する「息子」の立場やその親の行動も何だか意味がよくわからない。

にもかかわらず、この物語、圧倒的に読まされてしまうのだ。登場人物が魅力的だし、無駄な描写は少ない。読者が次にどうなるんだろうと気になる部分だけを的確に書き綴ることによって、物凄くテンポの良い物語に仕上がっているのだ。

 

もう一つ好感が持てるのが、押しつぶされたものの反発の仕方。普通は裏から手を回して非情な手口での報復を企ててもよさそうなのに、何だか「正面突破」が目的に摩り替ってしまう感があるのだ。

 

存外気持ちよく読める佳作。ただし、細かい設定が気になって眠れないタイプには全く向きません。ご注意を。