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最初の哲学者

作者:柳 広司/ 原作:/ 57点
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■童話を読んでいるかのようだ

 

先日IT系のブログで「技術の見える化をしてはいけない!」というちょっと意外なタイトルの記事を目にした。要点を説明すると、上司を見て学んだりした知識とマニュアルを読んで得た知識には大きな違いがあると言うのだ。見える化を行なうと、上司からの引き継ぎ成しに知識が身につくが、欠いてない情報は全て受け継がれないことになってしまうと言う。

これにはなるほどなと思った。アナログレコードをデジタル化したときにニュアンスとも言うべきデータがなくなってしまったのと同様、必須とされない部分はどんどん消えていってしまうのだ。

 

本作品「最初の哲学者」は西洋版日本書紀とでも言うべき作品である。神話や童話と言うのは何らかの教訓や史実が物語の形となって伝えられるものであり、それは元来口伝であったが故に、時間の経過とともにもとの形を失っていくものである。もっと言えば、元の形を失い、物語の要素だけが残った結果、神話性を持つようになったものも多いと推察される。

これは上述の話に良く似ている。口伝であるが故に感じ取った大切な部分だけが生き残る。ただし見える化は図られていなかったので、物語はその形を時代とともに変えてしまう。

 

本作品はそうして、文字に現れない「要素」だけが口伝された、壮大なる伝言ゲームの結果、我々の元に何が伝わっているかを、あえて見える化したスナップショットである。歴史作品と言うのは多かれ少なかれこういう構造ではあるが、柳氏は特にこの手の構造の作品が得意である。

 

が、自分が原作を中途半端に知っているせいか、あまり「今まで知らなかった史実を...」というような新しさは感じられなかった。また逆に中途半端な知識であるが故に、柳氏が原作にどんな味付けをしたかも理解できず仕舞い。結果、普通に童話を読んでいるような気分になってしまった。子供のころに良く観たタイムトラベル系啓蒙アニメに似た雰囲気。

 

ってなわけで、自分には正当な評価ができなかったため、低めの点数になってしまいました。作品本来の面白さについて教えていただける方はメールをよろしく…。