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Nのために

作者:湊かなえ/ 原作:/ 81点
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価格:1,470円(税込、送料別)

■傑作..となるには少し余分な部分が

 

「Nのために」は湊かなえによるちょっと変わった構造のミステリ作品である。何が変わっているかというと、探偵役がいないのだ。警察が解決するクライムノベルだったとかいうトンチ的意味ではなく、本当に探偵役が登場しない。

 

本作品の主人公はとある安い下宿屋の住人たちである。物語の冒頭はそのうちの一人、希美の視点で描かれる。彼女は趣味だった将棋をきっかけに旅行中に知り合った、西崎夫妻と親交を深め、たびたび彼らの住む高級マンションに遊びに行くようになる。

しかしあるころから、西崎夫人の様子がおかしくなってしまう。同じ下宿屋にすむ三人は、彼女の気晴らしになればと、希美の古い友人の協力を得て、ちょっとしたイベントを開催するのだが、そこでとんでもない事件が発生するのだった。

 

この物語の面白さは、次々に語り部が入れ替わる点にある。章ごとに別の人物の視点で語られる物語は次々に違った姿を見せるのだ。語り部となる人物たちはそれぞれ何らかの心の傷を抱えており、その独白とともに彼らの行動の理由が明らかになってゆく。

もともと連載小説だったということだから、読者は毎回別の作品を読まされている気分になったことだろう。

 

以下、物語の構造に対する完全なネタバレ

 

しかし、これらの素晴らしさをスポイルするような問題があって、残念ながら傑作になりそこなったという印象。実に勿体無い。以下、かなりネタバレ。

 

上記に書いたとおり「勿体無い」という印象の作品だった。確実に傑作になる要素を内包した作品なのに。

とはいえ、それでもなお、かなり面白い作品。本作品の勿体無い部分の影響をなるべく軽減するために、これから読む人には登場人物表の作成をお勧めします。そこさえ整理すれば、傑作として読めると思うので。