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レッドクリフ PartI

監督:ジョン・ウー/ 原作:/ 59点

■楽しく三国志

 

レッドクリフ PartIは、中国史を扱った作品の中でも人気の高い、三国志演義の前半のクライマックスシーン「赤壁の戦い」を描いた映画作品のpart 1である。元々は一本の映画として計画されたのだが、上映時間が5時間ぐらいになりそうだからと、慌てて2作品に分けたらしい。

それは別にかまわんが、2作の公開を半年も分けた辺りに、何かこう、金儲け的な何かを感じなくも無い。まぁ、儲からないといい映画は取れないので、そこは別にかまわないのだが、前半だけ見た観客は「続きは〜」と半年もイライラさせられた筈だ。なんせ「さあ漸く!」って所で終わっちゃうのだから。

 

とまぁ、初っ端から苦々しい事を書いたが、だからpart1が面白くないかというと、さにあらず。程よく手加減したワイヤアクションとCGによる戦闘シーンはなかなか素晴らしい。

300を視た時にも思ったが、本作品でも戦闘における「盾」の使い方が面白い。また、本作品に特徴的だったのが、とにかく「こかしてメッタ突き」って戦い方が多い事。ちょっとリアルに戦場を想像して気持ち悪くなったが、美しく嘘っぽく描かれがちな多くの映画の戦闘シーンとは一線を画していたと思う。

…にもかかわらず、お馬鹿な関羽・張飛はともかく趙雲まで、軽々しく武器を投げ過ぎだって。三国志演義における彼らは超人の域なんでいいんだけどさ、奥さんと一緒に笑いながら「投げんな!」って突っ込みいれてしまったよ。

 

part1の最初の見せ場は何といっても、阿斗を救出する趙雲の活躍。ただ、不勉強で原作どおりなのかどうか解らないが、あの井戸のシーンはもうちょっと「そうせざるを得なかった」という状況に見えるように描いて欲しかったように思う。個人的に「えー、趙雲に任せときゃ助けてくれたのに」と思ってしまった。

次の見せ場は八卦の陣での合戦シーンだろう。現実的にはあそこまで美しく細かい陣は不可能だと思うが、陣を迷路と化すというのは想像だにしなかった。三国時代といえばまだ西暦200年代である。その時代にあそこまでの戦略が生まれていた(しかも「古臭い陣」呼ばわりされていた)というのだから、中国四千年の歴史は伊達じゃないな。

 

本作品の配役もなかなか素晴らしい。孔明役の金城武はなんだかなぁと思っていたのだが、いざ本編を見てみたら大満足だった。孔明の「変人」部分がうまく表現できている。あの人胡散臭い役が似合うなぁ。

小喬役の女優も曹操が固執するにふさわしい美形で大満足。ただ、一緒にいて面白いのは孫尚香の方だろう。小喬の人物像は童貞男の理想の女性みたいで、個人的にはちょっと気持ち悪い。

 

そんなわけで「わーすげーすげー」と楽しくみる分には非常に良くできた作品。自分のように三国志等に詳しくない人には、楽しく歴史の勉強ができるし。

一方、よく温度のわからない作品だなと感じた。泣かせるわけでもなく、笑わせるわけでもなく、なんだか三国志をどう描きたいのかがピンとこないのだ。中国人にとっての三国志演義は余りにもメジャーすぎて、そういう演出方向性なんてのは既にどうでも良いのかな。

なお、レンタルする時にはpart2をお忘れなく。