変身作者:東野圭吾/ 原作:/ 57点
■氏の作品にしてはやや凡庸か
「変身」は東野圭吾によるSF?サスペンス?作品である。なかなかジャンル分けに悩む作品だ。狭義のホラーに分類しても良いのではとも感じるが、多分この書評の読者に誤解されそうなのでやめておこう。以下、ざっくりとした冒頭の流れを説明。
本作品の主人公は、気が弱くてあまり冴えないタイプの男である。芸術家を夢見てたまに絵を書いたりしているが、それ以外には特にこれといった取り柄もない。ある日彼が部屋を探しに行くと、そこに銃を持った強盗が現れた。たまたま居合わせた小さな女の子が不意に動いたことで犯人の標的となるのだが、彼は彼女をかばう形で銃弾に倒れる事となってしまう。銃弾は彼の右後頭部から前頭部へと貫通し、彼は瞬時に意識を失った。 ところが彼は死んではいなかった。意識を取り戻した彼は、徐々に医者からの説明聞き、なんととあるドナーから脳の一部を移植され、命を取り留めたという事実を知ることになるのだった。医者は「問題ない」と断言しているが、主人公は徐々に変貌していくように感じる自分の意識に恐怖するのだった。
氏の作品としてはなかなか過激な設定である。が、しかし、僕はこの辺りまで読んだ時点で凡そのストーリーが想像できてしまい、30ページぐらいの所の描写でほぼ確信を得てしまった。とはいいつつ東野圭吾のことだから、今の自分の確信はミスディレクションで、最終的にヒックリ替えされるに違いないとビクビクしていたのだが、残念ながら想像通りだった。うーん、残念。 そもそもこの「死にそうになった男が意識を取り戻すと」設定は、筒井康隆作品では頻繁に登場する設定である。例えば目が覚めると、脳だけが馬の体に移植されていたり、逆に全身にいろんな動物の臓器が移植されていたりする。そういう理由で個人的に馴染みの設定だったため、あまりその後の展開に驚きがなかっただけなのかも知れない。なので以降の感想は全て「ネタバレ」内に隠しておく。先入観なく読みたい人はクリックしないこと。
上記ネタバレ内のような理由で、意外性って点ではちょっと物足りなかったように思う。しかし、意外性だけの物語というわけではないので、充分に楽しく読み進めることができた。徐々に変貌していく自分の意識に苦しむ姿の描写は、ちょっと「アルジャーノンに花束を」を彷彿させる。
ってなわけで、普通ならまずまずの作品だけど東野圭吾の作品としては凡庸だと感じた。氏のパワーならもっと面白く出来るはず。
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