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名探偵の掟

作者:東野圭吾/ 原作:/ 77点
名探偵の掟

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■本格ミステリ好きの評価が真二つに割れるだろう作品

 

「名探偵の掟」は東野圭吾による『「本格ミステリ作品」を描いた、ミステリ作品』である。「本格ミステリ」というテクニカルタームを知らない人には何のことかよく分からないと思うので、まずは用語の解説をしよう。

テクニカルタームとしての「本格ミステリ」とはあるルールに則ったミステリ作品のことである。したがってここでの「本格」は「凄い」とか「本格的だ」とかそういう一般的な形容詞として使われているわけではない。「本格ミステリ」には「読者には探偵と同じ情報が提供されている」だとか「犯人は物語の序盤で登場していないとダメ」だとか様々な「ルール」が設定されており、それを守った書式で描かれた作品が「本格ミステリ」である。

ルールを守っているがゆえに、ストーリーはマンネリ化しやすく、お約束事に守られた世界観は、冷静に考えると現実ではありえない設定ばかりである(例えば一般人に調査中の情報をペラペラ喋る刑事、など)。本作品は、そういった本格ミステリの登場人物たちが、本格ミステリのお約束のジレンマに悩みながらも、本格ミステリ世界の住人を演じる姿を描いた涙と笑いのメタミステリ作品である。ってか単なる自虐的ギャグミステリ作品である(言っちゃった)。

 

本作品の一番の魅力は、そういった本格ミステリを小馬鹿にした設定でありながら、ギリギリ本格ミステリの範囲内で、ちゃんと読者の予想を外す結末を準備しているところである。「こんなバレバレのトリックを」と登場人物たちが嘆く姿を魅せられつつも、簡単には結末が想像できないあたりに、読者は笑いつつも焦らされることになるわけだ。これが単なる自虐ネタの塊だったらここまで面白くはならないだろう。

こうした笑いと驚きの作品が、短篇集の形で12章とそれにプロローグやエピローグが付与されているのだから、中々お買い得な作品である。いつもなら各章ごとの感想を書くところだが、前知識が無いほうが面白い作品ばかりなので、今回は割愛しようと思う。

 

上記のような設定のため、本格マニアは大いに笑うか、大いに怒り狂うかのどちらかであろう。どちらの目が出るかはそのひと次第だが、後者は多分僕の苦手なタイプだと思う。狭量だよね。

 

なお、本作品は長らくヒット作に恵まれなかった東野圭吾の出世作であり、2009年にはドラマ化も実現しているとの事。ドラマでわざわざ見直す事もないかと思いつつ、「湯けむり」と「さらば大河原」は見てみたいかも....。

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