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ルー=ガルー2 インクブスxスクブス 相容れぬ夢魔

作者:京極夏彦/ 原作:/ 90点

■長大な頁数を覆す程の爽快な展開

 

「ルー=ガルー2 インクブスxスクブス 相容れぬ夢魔」は前作ルー=ガルーの正式な続編SF作品である。「ルー=ガルーがアニメ化されたから続編を書いたんだろうなぁ。でも前作が完成した作品だったんだから、今更変な設定を上書きされても萎えるよなぁ」と思いつつ読み始めたのだが、いい意味で裏切られた。さすがは京極先生お見事です。

 

上述の通り正式な続編であるため、主要な登場人物は全て共通している。物語としては完全に独立しているため、特に前作から先に読む必要はないが、出来れば順に読んだ方が「マンネリズムの快感」が味わえるだろう。

前作を読んでいない人のために軽く説明しておくと、本シリーズの舞台は100年ぐらい未来の地球である。ネットワークが高度に発達し、コミュニケーションはネット越しに行ったほうが効率的なたため、物理的接触はほとんど不要の世の中となっている。その他、様々なリアルな未来設定が存在するのだが、それらを少しずつ知ることも本作品の魅力の一つなので、説明はここまでにしておこう。

なお、本作品の未来設定は一般公募によって集められた意見から抽出されたものである。1作目が出版されたときにこの設定をみて「いや、そんな未来は無いだろう」と思った読者も、2作目の出版された今となっては「未来はこちらに向かいそうだ」と感じるのではないだろうか。それぐらい説得力のある設定となっている。

 

本作品の主人公たちは15歳以下の少女であり、物語全体はミステリの構造をなしている。世界は設定は攻殻機動隊的な魅力も備えているし、アクションシーンも豊富。SFとしての設定も面白いのだから、これはもう面白くなるしか無いだろう。

特筆すべきはその文章の平易さである。日頃ややこしい文章を書いている京極夏彦にしてはという意味ではなく、多くのSF作品と比較しても、圧倒的に文章が読みやすい。主人公たちが若いからということもあるのだろうが、おそらくこの平易さは京極夏彦の手によって注意深くコントロールされているのだと思われる。お陰で約1000ページという長編であるにもかかわらず、すんなりと読むことができた。

 

また、本作品でも京極夏彦らしい「理屈」が展開される点も見逃せない。京極堂シリーズを読んだことのない人は、あの装丁を見て「妖怪が登場する作品」だと認識していると思うが、それは半分正解で半分間違っている。あのシリーズは怪異を存在しないけれど存在するものとして、心理学的に宗教学的に哲学的に分解した上で、ミステリとしての本筋にぶつけるという手法をとっている。

 

そんなわけで、SFアレルギーさえ無ければ誰にでも楽しく読めると思う名作。厚さにめげずぜひ手にとって欲しいと思う。筋トレにもなるし。

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