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マイティ・ソー

監督:ケネス・ブラナー/ 原作:スタン・リー/ 60点

■アメリカ人の理想的父親像か

 

マイティ・ソーはマーヴル系のスーパーヒーローの一人であり、アヴェンジャーズの一員でもある。ってシリーズを知らない人にはよく分かんないと思うのでざっくばらんに説明すると、なんかアメコミのヒーローの一人です。

マイティ・ソーってのはMighty Thorと綴る。直訳すると「凄い奴、トール」ってところ。「凄いぞマサルさん」とは関係が無い。念のため。

 

以下、設定に関するざっくりネタバレなので注意。

 

彼のヒーロとしとしてのジャンルはスーパーマン的な感じである。彼は突然変異で人間を超えたミュータントや改造人間の類ではなく、宇宙人だから人間より強いというパターンだ。彼が「装備品」を外すとタダのマッチョな人間程度に弱くなってしまう描写があるので、スーパーマンに分類すべきなのか、バットマンに分類すべきなのかは悩ましい所ではあるが。

で、先程さり気なく「トール」と書いたがこれで元ネタに気づいた人はいるだろうか。実はこれ、北欧神話のトール神の事である。オーディンの息子のトールだ。ソーってのはThorを英語読みしただけなのである。

トールという名前は北欧神話にあまり詳しくない人でもおそらく一度ぐらいは聞いたことがあるだろう。聖闘士星矢にも登場したし、各種RPGにも登場する。武器として「トールハンマー」が採用されることは多く、多くの場合はSFにおける雷を落とす武器か(そういや銀河英雄伝説にも登場したなぁ...)、ファンタジーにおける雷の魔力を纏ったハンマーとして登場するはずだ。本作品の主人公はそのトールである。

 

この作品の面白いのは、その北欧神話がSFに置き換えられているところ。ヨルムンガンド、アスガルドなどの世界は宇宙の星系として定義され、世界を繋ぐ「虹の橋」はアインシュタインゲートと呼ばれるワープ技術で実現されている。彼らの神秘的な力はその「聖なる武器」によって実現されている。この解釈はなかなか面白い。

ただし気をつけていただきたいのは、上記に「解釈」と書いたとおり、この設定は映画オリジナルであるということだ。実は原作コミックの方は完全な神話世界の話となっており、SF色は欠片も無いのだ。したがって自分のようにさほどマーヴルの世界に思い入れがなく、初めてソーを見る人には面白く映るが、熱烈な原作ファンの場合「何なんだこの原作の設定を完全に無視した作品は!」と激怒する羽目になるかも知れない。

 

ストーリーの方はと言うと、偉大なる父オーディンと、トール&ロキの兄弟がいて、王位を引き継ぐことになり、父は物事を深く考えない兄トールにお仕置きをしてといえば大体想像が付くだろう。個人的に楽しかったのはロキの扱い。女神転生というゲームをプレイしていた人ならピンとくるだろうが、ロキというのは北欧神話における悪戯好きの神であり、非常に嘘つきという設定なのだが、その部分が忠実に再現されている。

後の展開は映画を見てのお楽しみと言うか、王道なので良くも悪くも期待通りと言うか。お馬鹿な主人公を使っているので物語もさほど複雑になりようがないのだ。何の毒もないので、ハリーポッターよりは随分子供にも優しい作品だと思う。

 

...しかし、筋力と知性って組み合わせはヒーローの世界には無いのかね。ボディービルダーは一般的に高学歴なことが多いものだが...。