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ホンキイ・トンク

作者:筒井康隆/ 原作:/ 87点
ホンキイ・トンク【中古】afb

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価格:251円(税込、送料別)

■徹底的下ネタ短篇集

 

筒井氏のスラップスティックな作品はエログロ要素が比較的多い方だが、本短篇集は特にエロ要素が多い。それもセクシーなシーンが多いとかそういう類の作品ではなく、眉をひそめる様な、非常に下品なエロ要素が多い。

百田尚樹氏のツイッターの下ネタ連発を見て「作品を読む気が無くなった」という読者が頻出しているらしいが、彼らはこんな本絶対に読めないんだろうな。この超絶お下品な作品を書いた筒井氏は、確実に近代日本文学を支える屋台骨の1本を担う作家である。しかも彼が評価されてきた作品は何も「時をかける少女」のような純文学的SFばかりではなく、エログロスラップスティック作品も多い。

ちなみに手元にあるのは昭和58年発行の23版(!)であるが、初版は「筒井順慶」と同じ昭和48年である。こんな時代に「ホンキイ・トンク」のような作品を書いていたのだから、当時のSF作家陣は本当に凄いな。

 

なお、作品のタイトルとなったホンキイ・トンクとは同名の作品冒頭で語られるとおり、長距離輸送で調律の狂ったピアノで演奏したことから発達した、アメリカ西部の音楽の事である。boowyの曲に、honky-tonky crazy I love youってのがあったけど、あれの元ネタはこれ。「アスピリンを軽く噛めば、いつもよりも猥褻だぜ」なんて歌詞があったが、そういう狂った状況を歌ってたわけだ。そういう背景を知ってると、この短編集のタイトルが何故これなのかがよく理解できる。

 

【君発ちて後】

夫が蒸発した後の妻、稀夢子の行動を描いた作品。稀夢子は警察など信頼できないからと、独力で夫を探し始めるのだが、長い独身に性的欲求不満を自認し始めたあたりから、物語はどんどん混沌とした方向へ突き進んでいく。個人的に大好きなんだけど、こういう結末らしい結末がない作品って人によっては面白さがわからないらしい。他人の感想が気になるところ。

 

【ワイド仇討ち】

もはや明治維新は近い時代の、仇討ちのお話。真面目な時代劇になるのかとおもいきや、いつの間にか報道を笑いの対象としたドタバタ劇に変貌する。喜劇のはずなのに何となく仇討ちを強制される武士の立場に感情移入しちゃって切ない。

 

【断末魔酔狂地獄】

超高齢化社会を迎えた日本における、見苦しい老人たちのお話。こんなことを書くと「老人を見苦しいとは何事だ!」と怒られそうだが、この物語の中の老人があまりにも醜いのだからしょうがない。現実世界を見渡してもいい年したオジサンやオバサンの中身が若者時代と変わっていないと見苦しいもので、それが百歳を超えようものなら大変なことになるのは想像可能だろう。どうやらこの時代から既に高齢化社会は始まっていたようで、当時の日本人から見たら結婚平均年齢が30代半ばとなり、50歳になってもセクシーな衣装を着る現代人は同じようなものなのかもしれないな。

 

【オナンの末裔】

いやー、これは酷い。酷いんだけど面白い。以下、ネタバレになっちゃうのでネタバレ内に書くけどお下劣なので嫌いな人はスキップ。

 

【雨乞い小町】

あの有名な六歌仙たちが一体どんな会話をしていたのか、筒井康隆がそれを想像して構築したストーリー。とは言うものの彼らの会話は完全に昭和の文壇バーのそれであり、単なる歴史物ではなく、文壇を揶揄したコメディ作となっている。こういう読み方をすると歴史上の人物がすごく身近に感じられる。いっそ筒井氏がすべての歴史の教科書を書き直しれくれれば良いのに。

ちなみに、途中登場する星右京って人物は当然、筒井氏の先輩かつ友人であったSFの大家、星新一と小松左京の名前からもじったものである。

 

【小説「私小説」】

芸術作品と称して私小説だけを書き続ける作家を揶揄した作品。例のごとく下品で馬鹿げた方向に突っ走る。

 

【ぐれ健が戻った】

グレて実家を離れた息子が久しぶりに実家へ戻ってきた。わかりやすいお涙頂戴が始まるのだろう...なんて筒井康隆ファンなら絶対考えないと思うが当然そんな事にはならない。彼の家族はみんなして短気な連中ばかりである。この親にしてこの子ありという家族なのだ。で、彼らの会話を聞いていると徐々にどうにもおかしな箇所が出てきて...。

以下、完全なネタバレ

 

【ホンキイ・トンク】

とある技師がある小さな王国にコンピューターを納品に向かう話。タイトルと物語の展開から、このコンピューターがどの様な用途に使われるのかはすぐ想像が付くのだが、どちらかというと「彼女」の強かさの方に驚かされる。