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霊長類 南へ

作者:筒井康隆/ 原作:/ 58点

■洋物ホラー耐性が必要かも

 

「霊長類 南へ」は巨匠・筒井康隆氏の中期の名作である。最初に点数について説明しておくと、面白くないからこの点数をつけたわけではない。面白いが、お勧めしてよいものかどうか悩んだ末での点数である。

本作は氏の中期の作品らしい、スラップスティック(ドタバタ)系の作品であり、性的な用語や下品な単語の乱発、差別用語や人間の生き死にを馬鹿にするような表記が乱発する。したがって、それらを「不謹慎」とひと括りにして切り捨てるようなタイプの読者には全くむかない。実際自分も、若いころに読んだ際には手放しで大笑いしていたのだが、家族が出来た今読むと、背中に薄ら寒いものを覚えてしまい、当時と同じ熱中度で楽しむことは出来なかったぐらいだ。

 

本作品は、「復活の日」「日本沈没」などの小松左京の作品に代表されるような、「人類の破滅」物である。といっても例に挙げた2作がそれを文学的に描いているのに対し、本作はそれをこれでもかと言うぐらいのドタバタっぷりで、見苦しく馬鹿馬鹿しく下品に描いている。

物語冒頭、某国がとんでもなく馬鹿馬鹿しい理由で核ミサイルを誤射してしまう。それに各国が報復発射を行い、世界は滅亡への一途を辿る事となる。あとはひたすらにドタバタの描写が続くだけなのだ。

 

とまぁ、こんな作品なので、細かい解説は不要。自分達の内面に潜む動物的獰猛さや、自己中心的な見苦しさを、ゲラゲラ笑った上で反省する、心の余力のあるひとは一度お試しあれ。それが出来ないひとは手を出さない方が良いと思う。