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村田エフェンディ滞土録

作者:梨木香歩/ 原作:/ 98点
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■およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない

 

本作の舞台は約100年前の土耳古(トルコ)。主人公の村田は考古学を学ぶためにトルコへと渡航し、スタンブールのある下宿屋に滞在することとなる。そこには希臘(ギリシア)人、独逸(ドイツ)人も共同生活を営んでおり、彼は多彩な考え方、多彩な宗教観をもつ面々との不思議な生活を始めることとなった。

 

実は、本作品は同じく梨木香歩の名作である「家守綺譚」と作品世界を一にするものである。家守綺譚において、主人公の綿貫が語る、土耳古にいる友人というのが、本作品の主人公の村田のことなのだ。綿貫いわく「日記を書けといっておいたが、彼には文才が無いから、書き直してやらないと」とのことなので、それを考えるとこの「村田エフェンディ滞土録」は村田の日記を綿貫が清書したという、作品をまたがっての作中作とも言えるだろう。

 

さて、本作品の魅力といえば、なんといってもその国際色豊かな面々の間で交わされる会話であろう。文化や思想の異なる複数の国の人間が、如何にうまく付き合うかの縮図のような姿を描いており、実に心地よい。本作は家守綺譚と同じように短編の集まりという形で描かれるのだが、その第1話に登場する鸚鵡がその会話の中でまた非常に重要な役割を果たしている。なお、「失敗だ」など、「彼」の名言は数知れず、この本を読むと鸚鵡を飼いたくなってしまうので要注意である。

また、普通だと非科学的と思えるようなシーンも頻繁に登場する。このあたりのファンタジ色はかなり「家守綺譚」のそれに近い。

 

以下、重要なネタバレ

 

そんなわけで、この梨木香歩の大傑作。家守綺譚が好きだった人は確実に次に読むべき一冊です。また、家守綺譚は詩的過ぎてのめりこめなかったと言う貴方も、こちらの方がより一般的な小説として読みやすいのでお勧めです。こちらを先に呼んで家守綺譚の方が梨木香歩初心者には読みやすいかも。

 

追記:

なお、本作品は2005年度高校生向け指定課題図書として選ばれたそうな。さもありんという内容だと思う。