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魔性の子

作者:小野不由美/ 原作:/ 91点

■ホラーxファンタジxアンチファンタジ

 

魔性の子は「屍鬼」で有名となった小野不由美による、ホラー作品である。主人公の高里は非常に大人しく、成績も優秀なのだが、友人がいない。何故なら、彼の周りでは頻繁に「祟り」がおこるからである。彼に敵対したものは、大怪我をするなどの「祟り」にあい、彼が高校に上がるまでに死んでしまった同級生は数知れない。

彼は少年期に神隠しにあった。1年後に戻ってきたものの、その1年間の記憶は欠落している。果たして空白の1年間、彼はどこにいたのか。本当に彼は「祟り」を引き起こす原因なのか。

 

物語は母校に戻ってきた教生、広瀬の視点から語られ、序盤は「本当に祟りなどというものが存在するのか」という視点で読むことになる。しかし途中からの描写で、ミステリ的には解決できないことが明らかになり、早々に本作品がホラー作品であることがわかる。ある意味、京極夏彦と逆のことをやっている作品と言えよう。

 

....というあたりが、同じく小野不由美作の名作「十二国記」を読んでいない読者に対する説明となる。以下、十二国記6冊を読んでいない人には、ネタバレ。

とまぁ、ネタバレ内のような理由により、十二国記読者としては、冷静な気分で読むことが出来ない作品であり、うっかりすると「ああ苦しかった」で感想が終わってしまう。しかし、本作品にはそれだけではすまない魅力があるように思う。

 

本作品は初めて読む人にとってはホラーにみえるが、実は十二国記というファンタジー作品の悲劇的場面の描写でもある。そして、一般的に「ファンタジー」と呼ばれる作品には2つのアプローチが存在する。「指輪物語」のように確固として存在する世界として描く方法と、「精神的に追い詰められた人間が、逃避した世界」のように、実際には存在しない世界として描く方法だ。

本作の凄い所は、そのファンタジーの2つのアプローチを同時に適用したところにある。以下、物語の核心に触れるので、未読の方はスキップ。

 

上記ネタバレ内のことを考えると、小野不由美の立ち位置は「ファンタジなんて存在しないから、現実をちゃんとみなさい」ではないのだ。「ファンタジの世界があるとしたら、そこでは現世と同じぐらいの苦労があるだろう」なのだと思う。だから、どこの世界にいても、みんなそこで頑張るしかない。それこそが「一生懸命」ではなく「一所懸命」な生き方なのだから。

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