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トランスポーター

監督:ルイ・レテリエ/ 原作:/ 54点

■カンフー映画+TAXI

 

トランスポーターとは運び屋の事である。主人公フランクは冷静沈着で優秀な運び屋。「契約厳守」「名前は聞かない」「依頼品を開けない」という、自分で決めたと思われるルールを決して破らない。そのため、裏の世界では多大な信頼を受けている。愛車のBMWは美しく磨きこまれ、彼の几帳面さを物語っている。

...という導入なのだが、まぁ、あっけなくこの設定は無いものにされる。あっけなく依頼品は開けるし、遅刻してしまうのだ。なんせ、遅刻の原因には、トランクを開ける→あれ荷物が動く→ジュース買ってやって飲ませる→トイレだといわれ、ゆるいロープのみで行かせ、逃げられる→車開けっ放しで、警官に見つかるって、どのあたりが優秀な運び屋なんだ、それ。最後のトイレの件にいたっては平均的な一般人よりも圧倒的に警戒心が低いと思うのだが。(とりあえず、警官は可哀相な事になるし)

 

設定の甘さはそこらじゅうに散見する。

しかしまぁ、そんな事はどうだってよい。この手の映画に設定やストーリーのまともさを要求するのは、アラレちゃんに登場するブタがホーホケキョーと鳴くのに苦情を言うのと同じぐらい無粋である(実際にそういう事件があったのだ)。本作品はアクションシーンを楽しむ為のものであり、他の要素は空気みたいなものである。必要ではあるが、意識して生活する必要は無い。

実際、彼の運転シーンは惚れ惚れする。何故だか分からないが、男子は運転のうまい男にあこがれるものなのだ。遺伝子に組み込まれているのだから仕方が無い。「TAXIに似てるな。わざとだろうなぁ」と思っていたら、リュック・ベッソンが脚本を書いていた。サモアリナン。

格好いいのは運転だけではなく、フランク自身のアクションシーンもそう。泥んこプロレス的シーンからジャッキーチェーン的なアクションまで、手広くやっていてなかなか面白い。人の命をなんとも思わない連中が、銃を使わずに殴りかかってきたり、何故かボスが「生け捕りにしろ」とのたまったりと、主人公のアクションが最大限に生きるように、適当に進む展開が実に微笑ましい。いや、褒めてるのよ、これ。

 

ルイ・レテリエ監督って聞いた事無いなぁと思っていたら、インクレディブル・ハルクやタイタンの戦いの監督だった。本作品は初監督作品との事。ハルクは正直昨今のマーヴル物と並べると浅いなという印象だったが、映像的センスは良かったと思う。ともかく大味な作品を作る監督なので悩ましいが、タイタンの戦いはちょっと興味があるので見ておくかなぁ。

 

そんなわけで、悩んだけれど54点。面白いし、毒にも薬にもならないからビールを片手に見るのには丁度良いけど、映画館には見に行かないな。