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バタフライ・エフェクト

監督:エリック・ブレス/ 原作:/ 98点

■ショッキングだが見る価値有り

 

傑作。怖くて悲しくて、心温まる物語だ。ともかく、ジャンルすら知らずに見るべきである。タイトルも、ある「用語」であるが、用語の意味を知らずに見たほうが「絶対に」面白い。この映画ほどPVが邪魔な映画は珍しく、先入観0でこの映画を見ることができた人は非常にラッキーだ。そして自分は本当にラッキーだった。そんなわけで、映画マニアには100点。ミステリなどが好きな人には90点。エンタ系しか見たくない人には60点。小学生以下の子供には40点。複雑な話が苦手な人には0点。面白さを感じるためには理解力を要する映画だ。

以降にネタバレ控えめ、多めの感想をそれぞれ書くが、未見の方かつ、上記の高評価に興味を持ってこれから見る予定の人は、見るまでどちらも読まないことをお勧めする。本当にすごい作品なので。ただし、見るときは体力のあるときを選ぶように。かなりエネルギーを要する映画です。

 

 

■以下、まずはネタバレ控えめで。

本作はいきなりなんだかよくわからない「窮地」のシーンから始まる。なぜその状況が起こったのか、と頭を使って見るべき映画であることを、まず宣言しているわけだ。

本作の主人公はある少年/青年である。彼は昔から「たまに記憶がすっぽりと抜け落ちてしまう」という病気の持ち主だった。彼が記憶をなくすのは、決まって「衝撃的な何か」が起こった時のようである。また、父親は精神病院に入院しているという。したがって「彼がなぜ記憶をなくしてしまい、突飛な行動を起こしてしまう(ようにみえる)のか」という謎解きが本作の「最初の謎」となる。

彼は記憶の欠落を埋めるための治療の一環として、毎日日記をつけるよう医師に勧められる。日記をつけ始めて7年、その日記を読んでいるうちに、彼は「欠落した記憶」を思い出し、そして「ある能力」に気づいてしまう。最初の謎は解決し、タイトルの意味が明らかとなり(これは気づかない人の方が多いかも)、SF的展開が開始する。

 

本作の素晴らしい所は、この物語を単なるSFに仕立て上げなかったところ。観客は本作が終わるまでにSFとしての歯がゆさを感じさせられたかと思うと、逆に「本当にこれはSFなのか?」と悩まされたりと翻弄され続けることになる。

また、彼は能力を自分の欲のために使おうなんて風には考えない。いや、そんな余裕が無かったのかもしれないが、結果的にそういうシーンが無かったことにより、観客は主人公にシンクロし、一緒に苦悩することになる。この没入感は凄い。その分、主人公が悲惨な目にあうたびに、観客も精神的ダメージを受ける。男子は同性であるがゆえにシンクロ率が上がると思われるので、元気のあるときに見るよう警告したい。

 

どんどん悲惨になっていく物語にもかかわらず、ラストは幸いにして爽やかなものに。どんよりした気分で終わることが無いので安心。実は本作はマルチエンディングで、ディレクターズカット版はもっと最悪の終わりなのだが、公開版で正解だろう。劇場作品は最後に観客を解放してあげたほうが良い。この救いが無ければ90点はつけても100点はつけなかった。映画は整合性より、リズムだと思う。

 

 

■以下、完全ネタバレ感想というか解説というか。見てない人は決して読むべからず。

 

ネタバレ内で指摘した「矛盾点」や細かい分析が気になる方はこちらをどうぞ。オリジナルエンディングは救いが無さ過ぎて恐ろしいですが、確かに、妥当な破滅への道です。なお、完全な分析サイトなので、100%ネタバレです。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Namiki/4430/bf_text.htm