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ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

監督:ピーター・ジャクソン/ 原作:J・R・R・トールキン/ 60点

■古い戦争映画

 

ロード・オブ・ザ・リングはトールキン作の指輪物語を映画化したもの。指輪物語は剣と魔法のファンタジー作品の祖ともいえるもので、多くの種族やモンスターの名前は指輪物語で初めて登場した。ドラゴンクエストやファイナルファンタジーなどの世界観はこの作品なくしてはなしえなかったであろうという大作である。王の帰還は映画版ロード・オブ・ザ・リング3部作の最終話にあたり、大いなる期待が寄せられるところだが...個人的にはまぁ、その、普通だなぁ。

 

原作である指輪物語は未読であり、最終話である「王の帰還」の王も誰の話か良くわかっていなかったのだが、主人公フロドではなく、あの人のことだったのね、王って。おそらく原作に忠実な映画化がなされたのだとは思うが、脚本的見せ場は作品を重ねるごとに低迷傾向。本作にいたっては前2作を見ていないと全く理解不能なため、初心者お断りの作品だ。

 

映像は技術面で言えば気合が入っていて緻密で文句なし。ただ、Wizerdryのような剣と魔法の世界ではなく、単にクリーチャーがうごめく戦争映画という描き方。NHKの大河ドラマを見ているのに非常に近い印象。原作に忠実なのはわかるが、もっと1人1人の戦いを美しく描く事に集中したらどうか。いくら素晴らしい特殊メイクと最高のCGを使っても、あの規模の戦闘を引きの映像で見せたら、ドット絵でも見分けが付かないだろうに。

昨今のRPGでは誰でも魔法が使えたりするものだが、原点である指輪物語ともなると、まだ魔法というのは非常にレアな能力だった様子で、あまり登場の機会が無い。レアな能力者ガンダルフですら殆ど魔法は使わず、戦闘はとにかく地味。印象では非常に損をしている。ガンダルフはハリーに遠慮したのか?

 

脚本面でもハリウッド的楽しさは無し。あくまで歴史の本を読んでいる感覚。かといって静かな感動や感銘もない。何故かというと「誰かが頑張って勝ち取った勝利」という王道をはずしているからである。いや、王道が良いというわけではないけれど、映画を見ていて、誰にも感情移入できないのだ。

例えば「死が近い」と言われたあの人はなんの犠牲にもならず、特に物語に絡まず壮健。王は王の能力で争いを制したわけではなく、XXの残した○○を△△たちが□□したおかげで、☆☆に助けてもらっただけだし。肝心のフロドですら、最後まで腰抜け。指輪の魔力が...ってのもあるのだろうけど、余りにも不甲斐ない描きかたにフラストレーション上昇。エヴァ映画版のシンジ君とどこが違うんだ、お前。しかもシンジ君が動かなかったのには明確な理由があったわけだが、フロドはただの負け犬。原作通りなのかもしれないが、ちょっとゲンナリ。結局、一番頑張っていたのはサムなので、彼が主人公という事でいいのかな?少なくともエピローグの映像を見る限り、彼が一番幸せになっているだろう。語り部フロドが「でも君の物語はまだ続く」と書いたあたり、本当はサムが主人公なのか?そういう検証の意味で原作を読んでみたい気がする。

 

ってなわけで、原作のファンタジー文化への貢献とかを抜きにして、冷静に映画として楽しめたかという個人的評価で言うと、3作中最低だった気がする。60点ぐらい。うち50点は映像点。前2作より評価が低いのは、前2作の「フロド腰抜け演出」が逆襲への前振りでなかったことへのガッカリ感と、ストーリ外のコミカルさすら無くなってしまった長編映画への疲労感が原因。いくらなんでも3時間は長すぎる。