しんぼる監督:松本人志/ 原作:/ 56点
待望の松本人志監督作品第2弾。結論から言えば、「相変わらず」って所か。好きな部分も沢山あるけどやっぱり万人にはお勧めできない。
本作品では冒頭より2つの物語が並行して進められる。一方は言わずと知れた派手なパジャマの松本の物語であり、もう一方はエスカルゴマンというルチャドール(要はメキシコのプロレス)選手の物語である。都合、一見関係なさそうなメキシコの映像と、どこで繋がるのかが最初の興味となる。どこかで見たような雰囲気だなぁと思ったが、一番近いのはBABELか。...いや、内容はあんまり似てないけど。
さて、メインとなる松本の方の物語だが、コンセプトはセルに近い。真っ白な部屋に閉じ込められた男がいかに脱出するかだ。とは言うものの、セルのような恐ろしい仕掛けは何もなく、どちらかというと微笑ましい、というか明らかにお笑い的な仕掛けばかりだ。 で、このお笑いペースにがっかりかというと、そうでもない。この男が何者で、なぜここにいるのかが分からない為、非現実的空間や笑いの演出を楽しく見ることができた。ただし、出口を目指す為の「アプローチ」はもう少し考えて欲しかった。リアリズムを捨ててあの仕掛けで勝負するのはなんら問題ない。ただ、その「仮想空間内でのみ通じる現実」の中でのリアリズムにはこだわるべきだ。 また、主人公は我々の上を行くべきだ。 松本の思いつく脱出作が、我々の思いつきより下ではイライラするだけ。やはりそこは我々の上を行く発想で脱出を目指し、それを笑いの混じった手痛いしっぺ返しで阻んで欲しいのだ。
さて、一方のメキシコサイドはというと、これが、お手本のようなメキシコ映画。映画は冒頭メキシコのシーンから始まるのだが、正直こっちだけで進む物語が見たくなるほどの出来映え。大日本人の時にも感じたが、松本作品は「華やかな舞台から外れた、ちょっと寂しい日常」を描かせるとピカイチにうまい。大日本人は冒頭10分でやめればよかったのにというぐらいの出来だった。これが松本の実力なのか、撮監の実力によるものなのかは知らないが、松本が無関係なわけはあるまい。「チキンライス」の作詞の際にも感じたが、この人はもっと地に足の着いた作品が向いているのではないか。北野武がそうであるように、お笑いの松本と、監督の松本を使い分けて、真っ当な日本映画を撮ってみてはどうかと思う。 閑話休題。で、このメキシコサイド、何の意味があるかというと、後半で物語が劇的に変わる際のきっかけとなる。以下ガッツリネタバレ。
ネタバレ内に書いたとおり、目指したところは壮大な物語ではあったものの、いささか演出が下手な印象。思いつきは買うが、成功作とは呼べないというところ。これが仮にセルアニメ作品だったら何の違和感もなかっただろうに。映像化の難しいテーマを選びすぎたのかもしれない。ただ、本人の目指したとおり、他に類を見ないジャンルなのは確かだ。一番近いのは意外なことに「2001年宇宙の旅」ではないだろうか。
#次回作はなんでも時代劇とのこと。真面目に作ればきっと...。でもきっと....。
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