しずく作者:西 加奈子/ 原作:/ 68点
女性目線の女性主人公の短編集。西 加奈子の作品はこれがはじめて。江國香織よりもピュアだけど、村山由佳ほど子供じゃないといったところか。どれもこれも聞いたような話ではあるものの、台詞の言葉選びにセンスを感じる。本作品は、うちの奥様が「ジャケ買い」ならぬ「表紙借り」で図書館から借りてきた作品だが、なんというのかその、猫を良くわかっていらっしゃる作家さんだなと思う。
【ランドセル】 偶然再会した幼馴染みとの旅行の話。正直まぁありがちだよねこれ。
【灰皿】 1人で住むには広すぎる家を人に貸し出すことにした老婦人と、その貸借人の物語。実は貸借人は若い小説家で....という展開なのだが、作中作であるその処女作のタイトルが凄い。ぜひ一度読んでみたいので、西加奈子さんにおいては、ぜひこちらを外伝として出版していただきたいと思う。 ただ、田舎に住んでるせいか30万円の賃貸にリアリティを感じない。わが田舎においては、土地込みの新築一戸建を建ててもローン額が月に10万ってところだろう。小説家ってそんなに儲かる仕事だっけ??
【木蓮】 「子供」に対応できない「大人」の心理を描いた作品。シチュエーションとしてはもう100回は読んだだろうという、旦那の連れ子設定なのだが、心理描写や台詞回しが抜群に面白い。一人称での作品なので、イライラ感が追体験できる。最終的な締めも当たり前のところに着地するんだけど、こういう大胆なオチ台詞を選ぶあたりが、この人のセンスなのかも。灰皿に続き爆笑。
【影】 旅行中に出会ったうそつき少女の話。少女の年齢設定が20歳前後にしては描写が幼すぎる。小学生ぐらいにしか感じなかったんで、慌てて戻って年齢確認したぞ。いっそ小学生や中一ぐらいにした方が切ない物語になったのでは?
【しずく】 2匹の飼い猫の目線で描いた、若い作家夫婦の物語。もうね、のっけから猫の脳内描写の素晴らしさに大感動。この手の作品は意外と沢山あって、何度か読んだことがあるのだけれど、この支離滅裂な猫っぽい思考の表現は本作がピカイチ。無論、猫が何を考えているのかなんて分からないのだが、猫を飼ったことのある人なら、本作と猫の行動のフィットっぷりだけでにやにやしてしまうはずだ。 最初の1ページを読んだだけで、悲しい物語になるんだろうなとは想像していたけれど、わかっていても寂しい幕切れ。何より猫が可哀想でへこむ。本短編集のタイトルになっただけあって、ピカイチの作品。
【シャワーキャップ】 三十路の几帳面な女と、天然ボケなお母さんの話。これまたありがちなお話ではあるのだが、お母さんのキャラ勝ち。「ねむよしっ」は記憶に残る名言だと思う。自分は楽しめたけれど、「天然女」が嫌いな女子からは反感を買うキャラなのかも。
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