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G.I.ジョー

監督:スティーヴン・ソマーズ/ 原作:/ 76点

G.I.ジョーはソマーズ監督によるアメコミ系ど派手映画である。この時点で女性陣の多くが立ち去るとは思うが、まぁ、特にとめるほどでもない。本作品は好きな人は好き、嫌いな人は嫌いという作品であり、脚本や映像が神レベルなダークナイトや、知的好奇心をくすぐられるウォッチメンのように、お勧めしてまで無理に見てもらうような映画ではない。

 

G.I.ジョーといって日本人が思い浮かべるのはあの、アメリカ兵の人形だろう。そもそもG.I.Joeというネーミング自体、アメリカ軍人のことを指す呼称である。可動関節が多いのが面白いという事でマニアには人気の商品であり、中期のこち亀は頻繁に登場した、男の子のバービー人形とでも言うべき存在である。しかし本作品はそれを直接映像化したものではない。

冷戦が終わっていつまでも軍人人形で遊んでいるのが拙いと考えたのか、アメリカでも人気は徐々に下火になった。一度は立ち消えたG.I.ジョーは80年代になって新しいコンセプトでコミックかされ、85年ぐらいにX-メン等で有名なマーヴルにより、超人的能力を持ったヒーローたちの登場するアニメとしてリメイクされる。本映画はこのアニメ作品の実写化という位置づけだ。(長い説明だった)

 

で、このヒーローたちがまぁ、一応は「強化スーツを着て」だの何だのと理由をつけてはいるが、もはや人間を超えた動きで戦う。アメコミの基本を抑えたつくりなので、正義と悪の2グループが、互いの目的の為に戦ったり、個人的怨恨の為に戦ったり、裏切ったり仲直りしたりするわけだ。そして相変わらず、わざと誤解したとしか思えない、日本と中国を足して2で割ったような謎のキャラクタたちが大活躍して、日本人の気持ちを和ませてくれる。いや、本当に。

 

本作の一番の魅力はやはり、「一応」はただの人間のはずの主人公たちが、パワースーツを着てめちゃくちゃな速度で走って、といったような部分だろう。そのあたりは「最初から超能力者」であるX-メンシリーズよりも、主人公たちの慌てる様の分、視聴者が映像に入り込めるという利点がうまく出ている。

映像は戦争色が強い以外は全体的に楽しくて好感。FF13等をみて「映画を超えた」などと発言する人も多いが、実際にはあのゲームをやると、人間の動体視力を配慮していないとしか思えない演出も多く、こうした最初から映像を見せる気で作った映画にはかなわないなあと思う。

 

一方脚本はというと、まぁ、あまり深く考えるなというところ。そもそもの原作を読んでいないので、まとめるのが下手なのか、もともと崩壊しているのか、全然違うストーリーなのかは知らないが、まぁ、余り深みのある展開とはなっていない。

しかし、だ。この映画を脚本目当てで見に来る人間がどれだけいるのかと考えると、脚本はこれぐらい記号化された単純さで正解のような気がする。何だか知らないけど昔の怨恨で喧嘩したのねとかそれぐらい解れば十分。そのあたりは「アイランド」のような「深い物語を作ってるつもりでアホ脚本」の作品とは異なり、全く欠点とは呼べない。むしろ誰でも深く考えずにど迫力映像が楽しめるのだから利点といってもいいだろう。

 

そんなわけで、アメコミアレルギーさえ無ければ誰にでも楽しい、ど派手映画である本作品。女子に70点、男子に80点。ちょっとサービスで76点にしてみた。わざわざお金を払って暗い映画を見るぐらいなら、こういうのを見てワハハってのがハリウッド映画のいいところだと思う。