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The Catcher in the Rye

作者:J.D. Salinger/ 原作:/ 95点
Catcher in the Rye[洋書]

Catcher in the Rye[洋書]

価格:1,679円(税込、送料別)

註) これは原文のThe Catcher in the Rye.を読んだ感想です。野崎訳や村上訳はまだ読んでいませんので、そちらで本作品がどのように解釈されているかは知らずに書いています。ご容赦を。

 

The Catcher in the Rye.は1951年に書かれた、J.D.サリンジャーの代表作だ。いまさら感想を書くのも気恥ずかしいぐらいだが、やはり書いておこうと思う。

本作品はホールデンという少年を主人公としたジュヴナイル作品である。物語は全て、自分の体験談を語る、ホールデン自身の言葉によって紡がれる。したがって本文は当時の若者言葉で記述されており、英文には独特のリズムがある。

主人公ホールデンは学校を退学となってしまった。それも3回目である。世の中のインチキが許せない、正義感が強く、純粋だが、裏返せば非常に幼いホールデンは、周囲に歩調を合わせる能力に欠けていたのだ。そんなホールデンが、ニューヨークの街を放浪し、見聞きしたり考えたりした事によって物語りは進められる。

 

この非常に青臭い主人公の体験談を鬱陶しいと読むのか、自分の青かった時代に重ね合わせて読むのかによってこの作品の評価は大きく変わるだろうと思う。そしておそらく、精神的に大人になるのが早い女性には評価されにくいのではないかと思う。そういった意味で本作の評価には満点をつけなかった。

男子の多くは多かれ少なかれ彼のような、青臭い感覚を持っている。それは少年時代のみならず、大学生になっても簡単には抜け切らない。成人して随分たっても、彼に同調する人間は少なからず存在し、そういう人間が正義の為に事件を起こした例も多い。例えばジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマンや、レーガン元大統領を狙撃したジョン・ヒンクリーも本書を愛読していた。そのような事実から、本書が「危険図書」という扱いを受けていた歴史も存在するぐらいだ。おそらく多くの男性がこの青臭さを無くす瞬間は、童貞喪失のタイミングであろう。このbaristaの予想はおそらく大きく外れていないだろうと思っている。

以下、攻殻機動隊を見ていない人にはネタバレ

 

そんなわけで、思春期以降の男性の心理を見事に描いた本作品。男性に100点、女性に90点とさせていただいた。ただ、上記は作品の背景等に対する評価のみになってしまったので、以下に別のサイトで日記として書いた文章を多少改変して引用し、内容に対する評価とします。

 

以下、引用

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ちょっと今日は長いお話を。タイトルを知らない人の無いくらい有名な世界的文学作品「ライ麦畑でつかまえて」の作者であるJ. D. サリンジャー氏が、昨日、91歳で亡くなった。とある事件をきっかけに厭世的生活を送っていた為、当時の数十作品以降、新作の発表されることの無いままだった。生前に「世間との関わりが嫌なだけで、書く事自体は好き。ただ、自分の為に書きたい」とのコメントを残していることもあり、氏の自宅には沢山の遺作が残されていることだろう。発掘しないと文化的損失だという思いもあるが、氏の意志を考えるなら公開しないべきなのかも。少なくとも「見苦しい利権争い」などは氏の最も嫌う処なので、氏の親戚の方々にはくれぐれも素晴らしい対応をお願いしたいと思う。

 

偉そうな事を書いてみたが、僕が氏の作品を初めて読んだのは数年前のことだったりする。昔から天邪鬼な男だったので、「有名作品は読まない」と避けていたのだった。相変わらず馬鹿だなぁ。

何年か前に、TOEIC対策として、とにかく沢山の洋書を原文で読みあさった事があった。その時期に、大好きな作品「攻殻機動隊 stand alone complex」で引用されていた事もあり、氏のCatcher in the Rye.を原文で読んだ。これが実に面白かった。辞書なしの原文で読んでいるにも関わらず、「ホールデンの口調」が感じられるぐらいに、非常に独特の文体の作品だった。続いて短編集Nine stories.も読んだ。こちらは非常に難しくて、辞書なしではよく意味が分からないものが多かったが、やはり攻殻でネタに使われている「笑い男」は非常に切なくて大好きな作品の一つだ。それ以来、J.D.サリンジャーは自分の中でも大好きな作家の一人となり、前述の事件で引き篭っている事も知っていたので、いつか、書きためたものを公表してくれないかと楽しみにしていたのだが。誠に残念だ。

 

ところで、みなさんは「ライ麦」を読んだことがあるだろうか?また、あのタイトルの意味をちゃんと理解しているだろうか?僕はずっとよくわかっていなかった。ちゃんと翻訳版を読んだらあっさり解ることなのかもしれないけれど、少なくとも僕は良くわかっていなかったのだ。ここにきて、「あぁ、こういう事だったのか」とようやく理解できた気がするのでここで説明してみたいと思う。読んだことの無い人はネタバレになってしまうので、ここで引き返してください。

 

以下、ネタバレ

 

そんな素晴らしい作品を59年前に著した作家、J.D. サリンジャーに敬意を表して、今日の更新を終える。素晴らしい作品群を本当にありがとうございました。

Salinger's the Catcher in the Rye[洋書]

Salinger's the Catcher in the Rye[洋書]

価格:3,515円(税込、送料別)

ライ麦畑でつかまえて

ライ麦畑でつかまえて

価格:924円(税込、送料別)