旅のラゴス作者:筒井康隆/ 原作:/ 94点
筒井康隆の中期の作品には短編のスラップスティックが多いが、本作品は物語性を大切にした、読み応えの有る長編である。とはいえ、非常に簡潔にまとめられた各章が1つの短編として成立しており、それらを積み重ねることによって、物語が構成されている。そしてそのそれぞれが非常にアイデアに富んだものとなっており、単なる連作の一章という枠には収まらない。
余談だが、星 新一と筒井康隆といえば、アイデアを贅沢に乱れ打ちすることで有名である。うまく暖めれば1冊の長編になりそうなアイデアを、数十ページ、事によっては数ページで使い捨てし、お二人でSFのアイデアを9割がた使い果たしてしまったのではないか。アイデアの塊のような人たちである。
閑話休題。 「旅のラゴス」は主人公ラゴスの自伝的旅行記の形で描かれるが、その世界はわれわれの知る世界とは趣を異にする。 以下、世界観のネタバレ。見ずに作品を読んだほうが面白いと思う。 本作の素晴らしい点は、物語が単なる旅行記に終わらないこと。旅を人生に見立てるなどというのは、あまりにも使い古されたモチーフではあるが、それでもなお本作での描き方は秀逸である。人の生き方、そして学問とは何か。数百ページの作品に、人生の長さを感じることのできる作品だ。傑作。
万人に90点。中高生に100点。SF・ファンタジ嫌いに80点ってところか。深いのに爽やかな作品なのでお勧めです。
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