千年女優監督:今 敏/ 原作:/ 69点
今監督を業界内で一躍有名にした、名作の誉れ高い作品である。結論から言えば、映像やカット割りなどの表現は満点。しかし、脚本で痛い目を見たといえよう。
本作品の主人公は千代子という元大女優である。しかしある日を境に業界からは姿を消し、完全な隠遁生活をすごしていた。そこへある二人の記者が訪れる。二人はある物を提供する代わりに、俗世間とのつながりを絶っていた千代子へのインタビューの機会を得たのだった。 物語は千代子の回想シーンにて構成される....のだが、のっけから思いもかけない表現手法にゾクリとさせられる。映像もちろん期待通りの美しさなのだが、それ以上に構成が素晴らしい。こんなコンテがかけるのは才能であろう。この冒頭の画面から、最初の回想の終わりまでのシークエンスは鳥肌物で、「この先どんな物凄い物語が待ち受けているのだろう」とぞくぞくさせられた。
しかし、残念ながら見せ場はここまで。その後は退屈な描写が連続し、気づけば「いつ物語が展開するのだろう」とイライラさせられる事となる。 以下、ガッツリ内容に触れます。まだ見ていない方はブレーキ。 結果的にネタバレ内に書いたような大事件は起こらず。起承転結の起が物凄かっただけに、その後はずっと承承承承承承という映像で非常に残念な思いをした。脚本に思いきりが足りない。結果的には素晴らしい映像技術を用いた、朝の連続テレビ小説2話分、という印象。
とまぁ、非常に厳しいことばかり書いたが、映像は非常に素晴らしいし、カット割りも独創的。エンディングのめまぐるしい移り変わりはちょっと楽しい。映像表現について学びたい人は一度は見るべきだと思う。いい脚本家がつけばおお化けする監督だよなぁ、と思ったが、それがパプリカか。あちらは良いできの作品だが、それでもややリピート表現が多すぎるかな。悪夢的に使っているのはわかっているけれど。
そんなわけで、この映像表現のお手本のような佳作。映画好きとしては見るべき点がいっぱいある素敵な作品ではあるものの、一般には69点ってところか。残念ながら合格点に満たず。実に惜しい。
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