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鈍獣

監督:細野ひで晃/ 原作:宮藤官九郎/ 90点
鈍獣: プレミアム エディション 【DVD】

鈍獣: プレミアム エディション 【DVD】

価格:4,442円(税込、送料別)

どこにでも鈍い奴というのはいるもので、嫌われたり疎まれたり、馬鹿にされていても当の本人は全然気づいていなかったりする。得てしてそういう奴はからかいの対象になってしまうわけだが、鈍い原因が能力の低さによる物でない限り、その鈍さを欠点とは決め付け難い。

例えば、苦味に対する感覚が鈍い人ほど野菜を美味しく食べることができる。キャベツの苦味は遺伝的に感じられる人と全く感じない人に分かれるというから、感度の問題ですらない。当然、後者のほうが幸せにキャベツを食べることができる。味に限らず、「つらさ」に鈍感であることはある種の才能と呼べることもある。

本作品はそんな才能をバリバリ発揮する、極端に鈍い男の物語だ。あまりに鈍かったので、自分の事をからかったり苛めたりしていた連中を親友だと思っていたぐらいだ。それだけではなく彼は身体的にも極端に鈍い。それも感覚が鈍いだけではなく、殆ど不死身のともいえるほどの肉体を持っている。

そんな主人公「凸っち」を演じる浅野忠信の演技がすごい。イチなどで見せた死ぬほど恐ろしいヤクザ役とは別人。愚鈍で幼い無邪気な大人という不思議な役を完璧に演じきっている。

 

本作品の脚本は凄い。クドカン映画=ナンセンス系という公式をはずすことなく、本作もトンデモ映像、トンデモ設定満載なのだが、それを忘れるぐらいに脚本がよくできている。雑誌編集者が、作中作「鈍獣」の作者である凸川を探し、みんなに凸っちのエピソードを聞くという形で展開する物語は、ミステリとしての側面を持っており、穏やかに進むにもかかわらず、目を話すことができない。小説を一気読みしているような気分になった。

 

以下、多少のネタバレあり。

 

そんなわけで、素晴らしい脚本と浅野忠信の怪演が光るこの作品。邦画に偏見のない人には90点。クドカン好きには100点。一般映画好きにも80点ってところか。「パコ」もよかったけど、こっちのほうが好きかも。

 

追記:

少年時代の回想シーンはアニメで表現されるのだが、その映像がやたら綺麗。なんか鉄コン筋クリートみたいだなぁ、と思ってたら、本当に4℃が作っていた。本当にいい仕事するなぁ。

 

さらに追記。

以下完全なネタバレ