サイト内検索:  

さがしもの

作者:角田光代/ 原作:/ 78点
 【中古】文庫 さがしもの

 【中古】文庫 さがしもの

価格:170円(税込、送料別)

「さがしもの」は本を主題としたショートストーリーで綴られる、1人アンソロジー系の作品である。作中のストーリーは全て一人称で語られる為、作品ごとに口調の違いなどこそあれ、全体的に日本語が美しく、読んでいて非常に心地よい。何よりも作者の本に対する愛情がいっぱいで、本好きなら読んでいるだけで幸せになるだろう。

 

ある作家曰く、本は必ず誤読されるものであるという。作者の思い通りに理解されるとは限らないだけでなく、作者すら思いつかないような深い解釈を、読者が成し遂げることもある。それは自分の性格を友人のほうが理解している事があるのと同じで、なんら不思議な現象ではない。10人いれば10人の理解があるし、同じ人間でもその読む時期によって別の解釈をするだろう。

また、逆に本は人間自体を変えてしまう。本を読むことで知識としてあたらしい見解を得ることは多い。しかし本が本領を発揮するのはその何十年も後だ。ある台詞が、ある考え方が、果たしてどの本からの引用なのかわからなくなり、それが本に書いてあったことなのか、自分の思いつきなのかの区別がなくなったとき、本は静かにその姿を消し、自分の一部と化している。

 

これから先の世代ではどうなるのか解らないが、われわれ紙世代の本好きたちの多くは、そのコンテンツだけでなく、装丁された「本」という媒体に愛を持っている。装丁が美しいとかそういった表面的な問題ではなく、活字が紙面に印字された状態に愛を感じる。それはおそらく本が劣化しうるものだからではないか。簡単にはコピーできず、汚れたり、破れたり、無くなったり。劣化することは命のあること。だからこそこんなにいとおしいのだろう。

 

そんなわけで、本好きのための本についての本(大統領演説のようだ)であるこの作品。一般人に75点。本好きに80点。清々しく読める傑作です。

 

------

2011/08/31追記

えっと、最近「角田光代 さがしもの あらすじ」ってキーワードで検索してうちのサイトに辿り着く人が非常に多いのですが何故でしょう?何かの課題図書にでもなってるんでしょうか?非常に気になるので理由をご存知の方、barista@sdls.jpまで、ご報告いただければ幸いです。

さがしもの

さがしもの

価格:460円(税込、送料別)

【中古本】 さがしもの (新潮文庫)

【中古本】 さがしもの (新潮文庫)

価格:200円(税込、送料別)

【中古】afb【古本】空中庭園/角田光代

【中古】afb【古本】空中庭園/角田光代

価格:99円(税込、送料別)

ナナイロノコイ

ナナイロノコイ

価格:520円(税込、送料別)