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マシニスト

監督:ブラッド・アンダーソン/ 原作:スコット・ソーサー/ 80点
マシニスト 【DVD】

マシニスト 【DVD】

価格:3,591円(税込、送料別)

原題は「The Machinist」。直訳すれば「ある機械工」ってあたり。昔なら「眠れぬ男」とか「ある機械工の憂鬱」なんてタイトルにしてそうなタイトルだが、そのままカタカナの「マシニスト」。最近増えつつあるなぁ、この手のタイトル。はたしてこれを評価すべきか、手抜きと詰るべきか、傾向としての評価は難しいところ。しかしまぁ、本作の場合は内容が想像できないと言う点でマルだと思う。

 

本作は「1年間眠っていない不眠症の男」を描いたサイコ・スリラー。主人公を演じるのは「バットマンビギンズ」「ダークナイト」の主演で一躍有名となった「クリスチャン・ベール」である。ベールは本作の撮影のために30kgものダイエットを行い、その直後のバットマンビギンズの撮影のために、45kgの増量(脂肪ではなく筋肉で、だ)を行なっているほどの役者馬鹿。本作での演技にも鬼気迫る凄みがある。

見るからに病的な姿は「ファイトクラブ」における「エドワード・ノートン」の不眠症の演技をはるかに凌駕してしまった。実際に過酷な減量を行っていることもあって、ノートンの演技が「元気がなさそうな演技」をしているように見えるのに対し、ベールは「元気そうな演技」をしているように見えるのだ。元気そうに振舞えば振舞うほど「こいつ、元気そうに振舞ってるけど、このまま死んじゃうんじゃないか??」と心配になる。

 

脚本も実に素晴らしく、緻密に計算されていて観客を飽きさせない。観客が思いつくであろう仮説を踏まえて、親切に誤解を誘うヒントを与え、それを潰して行く。実に良く出来たミステリだ。良く出来すぎていて、この手の作品に慣れている人にはすぐに大筋がわかってしまうが、わかってしまっても面白さに遜色は無い。というか、そういう面白さのわかる人だからこそ筋が読めると言うべきか。

ミステリ的要素の強い映画であるため、「答えあわせまで全く筋が想像できない」「仮説も思いつかない」人にはやや退屈な映画となるかもしれない。ある意味ボーダーの高い映画だと思う。あの格好よすぎるポスターに騙されて、エンタティメントを期待して見てはいけない。

その一方で、芸術映画や通好みの映画にありがちな退屈さは無い。テンポも早く、見せ場も多い。ショッキングでグロイ映像も少しあるが、非常に楽しく鑑賞できた。また、ちゃんと映像に布石が打ってあること、それをきちんと回収していること、エンディングが非常に綺麗に収めてあることにより、サイコホラーであるにもかかわらず、見終わった後は非常にスッキリする。そう、スッキリするのだ。

「スッキリする」を連呼した理由は重大なネタバレになるので書かない。しかし、これは非常に重要なポイントだ。やや怖い映画だが、中高生にならこの教訓のためだけに見せてもよいかと思うぐらい。

 

そんなわけで、サイコスリラーの傑作であるマシ二スト。一般人に60点。小説などでミステリ等に慣れている人に85点。映画マニアに95点。かなりお勧め。見て面白くない人がいたとしても、このジャンルが向いていないのであって、この映画が悪いのではないと思う。しかし凄いな、クリスチャン・ベール。あんたなら「芸のためなら女房も泣かす」権利があるかもしれん。(※実はそういう事件がありました)

マシニスト

マシニスト

価格:620円(税込、送料別)