サイト内検索:  

軍鶏

監督:ソイ・チェン/ 原作:橋本以蔵/ 30点
軍鶏 Shamo 【DVD】

軍鶏 Shamo 【DVD】

価格:3,591円(税込、送料別)

■香港映画の限界か

 

カンフーシェフと同じ日に借りた作品だが、想像以上に期待外れ。元々重たい原作をうまく処理し切れていない。脚本、キャスティングともに随分苦しい作品となった。

 

まずはキャスティング。主人公が余りに迫力不足。香港映画事情に詳しくないので、どこのアイドルを起用したのかは知らないが、体に緊張感が無さ過ぎる。顔つきはまあまあだが、あれでは強く見えない。ちょっと興ざめ。

次に、魔裟斗の起用。演技が下手なのはかまわない。しかし彼には空手の動きは出来ない。作品全体で「空手家が空手の動きをしていない」点が目立つが、しかしそこには中国拳法独特の美しさがある。一方、魔裟斗はと言うと、格闘家なので動きは鋭いが、いかんせん実践的ではあっても美しさは皆無。彼の空手の型のシーンはちょっと笑いが起きるぐらいのレベル。体もオフシーズンの体で全く絞られておらず、興ざめ。

何より問題なのは彼のあの浅黒く日焼けした肌と茶髪という風貌。「動物」的な主人公成嶋亮に対し、完成された空手の具現者である「人間」代表としての菅原役なのに、あんな生意気そうな風貌の男をキャスティングしてはいけない。

 

もっと問題なのは脚本。「親殺しという人として許されない罪を犯しつつも、本能で生きる成嶋の動物的美しさ」を描いた作品のはずなのに、あの設定変更はない。成嶋をただの被害者に仕立て上げてしまった。それでは軍鶏(シャモ)というより矮鶏(チャボ)である。

菅原の彼女とのあのシーンも含め、「香港映画では主人公の行動として観客に受け入れがたい悪行」を避けたのだと思うが、それを避けるなら軍鶏と言う作品を題材に選んで欲しくはなかった。

 

そんなわけで、原作ファンには15点。ちょっと厳しい評価となった。一般人には50点ぐらいか。映像は悪くないので、原作を全く知らない人にはそれなりの作品なのかもしれない。