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パコと魔法の絵本

監督:中島哲也/ 原作:後藤ひろひと/ 88点
パコと魔法の絵本

パコと魔法の絵本

価格:3,392円(税込、送料別)

この映画がどんな内容なのか、前知識ゼロで見られた人は幸せ物である。したがって、邦画に偏見のない人なら、ここでこの批評を読むのをやめ、すぐさまレンタル屋に走るべきだ。ネタバレには気をつけているつもりだが、批評という文章の性質上、完全なネタバレ無しの文章を書くのは不可能なのだから。

 

以下、ネタバレ度PVレベルで解説。

本作品はパコという記憶に障害を持つ少女と大貫という偏屈じじいの交流を描いた病院ドラマである。と、説明されると、「小公子セディ」等に代表されるハウス劇場的な作品を想像してしまうが、まったく異なる。お涙頂戴のクサい物語になろうとしても、映像が、登場人物がバカバカし過ぎて、そんな気分にならないのだ。

 

登場人物たちは、役所浩司、土屋アンナ、妻夫木聡、小池栄子などそうそうたるメンバなのだが、みな原形をとどめない程のメイクと衣装で出演する。言動もめちゃくちゃ。映像効果もジョーク作品のそれに統一されている。この変人のあつまりや極彩色の映像と多用されるCGが、すばらしく幻想的な映像を作り上げている。これはもはや和製ティンバートン作品と言ってよい。これまでに無かったような映像だ。

派手な衣装と現実味のないセットは「CGを現実に近づける」のではなく、「現実をCGに近づける」という逆のアプローチで、多用されるアニメパートとのギャップを埋めている。結果、ディズニーによる名作「魔法にかけられて」以上に違和感を感じないできばえになっていると思う。とまぁ、そんなわけで映像点は100点。

 

ストーリーに関しては、どうしたってこの構造は、わかりやすいお涙頂戴になっちゃうし、一本調子になるのも仕方がないかなと言うところ...と思っていたのだが、予期せぬ伏線の回収など、細かく見ればきっちり作りこまれていて好感。一番のトリックも、後で考えれば当然ともいえる構造なのだが、自分は見事にだまされた。何も考えずに見て、気持ち良くだまされれば不満は無いはず。

 

尊敬する前田さんのサイト(http://movie.maeda-y.com/movie/01174.htm)では酷評されているけれど、心が汚れちゃったのでは?なんて思わなくもない(笑)。確かに万人への間口は狭いのかもしれないけれど、じゃあティンバートン作品の間口が広いのかと言うと、決してそんなことは無いだろう。「チャーリーとチョコレート工場」に70点をつけて(http://movie.maeda-y.com/movie/00589.htm)、この作品が40点ってのは.....まぁ、好みの問題だからしょうがないか。あの人は大人向け作品が好きだからなぁ。

おそらく同様の評価の荒れはあると思うが、個人的には超のつくお勧め。物語の筋のまだ理解できない子供、理解できるようになった子供、大人、誰が見てもそれぞれの楽しみ方があると思う。