東京残酷警察監督:西村喜廣/ 原作:/ 77点
■見ないと後悔する...けど、見ても後悔する作品
非常に素晴らしいこの作品をあまり高い点数にしなかったのには理由がある。一般人には正視に耐えないほどの残酷映像だからだ。本作は厳しい制限を回避するため、わざわざアメリカ資本で撮影したほどの、血みどろグロ映像満載のホラーアクションムービーである。自分は最初の3分で見るのをやめようかと思った。本作を見た後だと、バイオハザードなどはちょっぴりセクシーなSFアクション映画に思えるぐらいだ。 しかしながら、ホラー映画に耐性のある人間なら見る価値のある映画ではある。自分は余り耐性がないほうなので、ちょっと気分が悪くなったが、それでもなお、面白いと思えるような仕掛けがたくさんあった。
本作品は仮想近未来を描いたもの。その世界では異形の姿に変貌する能力を持つ、連続殺人鬼たちが跋扈する。それらを退治すべく立ち上がった警察は、なんと民営化されている。また、凶悪な犯罪に立ち向かうため、勧善懲悪が良しとされ、犯罪者は痴漢レベルの軽犯罪であっても死刑どころか、残酷にリンチして殺してもかまわないというとんでもない世界となっている。 主人公は警察官だった父を失い、優秀な警察官として育て上げられた少女である。日本刀を携え、悪人を切り倒す姿はBLOOD的。ただし、映像美を目指すのではなく、描き方はあくまで2流ホラー。
本作品の素晴らしい所は、それらをリアルな世界として描くのではなく、ありえない方向へデフォルメしている点。作品中に登場する、偽テレビCMはその最たるもので、非常にレベルが高いジョークを提供している。これは構造的にはスターシップ・トゥルーパーズの軍隊勧誘CMと同じ。 スターシップ・トゥルーパーズのCMが一見軍国主義万歳的でありながら、アメリカ社会を批判する反戦的なものであったのと同じように、本作品のそれも、勧善懲悪・ローマ的司法制度への批判を行っている。....部分もある。7割はギャグなのであまりまじめに語ってはいけないが、監督がただの馬鹿ではないのがよくわかる。
映像は一貫して気持ち悪いが、人体改造マニアに受けそうな倒錯的な美のシーンもあり、なかなか頑張っている。ストーリーはばればれだが、それも明らかに狙ったもの。カット割やアングルも含め漫画的で印象派主義。 そんな問題作の東京残酷警察、一般人には5点。映画マニアに50点。ホラー好きには80点。人体改造マニアには100点だ。正直この批評を書いているだけで、なんか胸の辺りが気持ち悪くなるが、悪い作品ではない。
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