Angels & Demons作者:Dan Brown/ 原作:/ 70点
日本で生まれ育った我々にとって、科学は真実である。一方、米国においては、進化論など科学の一部に対しては今も賛否両論だ。聖書の記述と矛盾するからである。それを滑稽だと思う日本人も、信仰を滑稽だとは思っていない。生命より信仰を優先することすらある。
「連続墓石破壊事件で、全国120箇所の約2万基の墓石を破壊したと見られる男が、霊園ロータリにて礫死体で発見されました」というニュースが流れたとする。大抵の人は「そら見ろ、天罰だ」と思うだろう。今、貴方は信仰の下に人の死を肯定した。 ガリレオ投獄の事件は有名である。誰もが酷いと思う。しかしそれが遠い過去の話ではない事の証明だ。
本作は宗教と科学の確執により発生した事件を取り扱ったサスペンス作品である。ダン・ブラウン特有の膨大な資料に基づく作品は、SFの緻密さとミステリの奥深さを併せ持っている。次々に舞台を変え進行する物語は、躍動感を産み、読者を飽きさせないだろう。反面、宗教と科学の歴史に関する薀蓄は広く浅く、深い分静的だったダヴィンチ・コードとは評価が分かれるだろう。
信仰に傅く者は、精神を重視するあまり肉体を軽んじる傾向にある。計算機の中枢は箱ではなくCPUだ。さらにCPUは回路に過ぎず、計算は電気が流れて初めて行なわれる。では、内部の電気信号だけを抽出したとき、それを純粋な計算機だと呼べるだろうか?全てを統合したものだけが「個」と呼べる。そして統合するという概念こそが魂ではないだろうか。
Copyright barista 2010 - All rights reserved. |