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沈黙博物館

作者:小川洋子/ 原作:/ 87点
沈黙博物館

沈黙博物館

価格:714円(税込、送料別)

TVを見ていると、たまに「自然こそが至高の芸術作品だ」等という、とんでもない台詞を耳にすることがある。明らかに芸術を理解していない人の台詞だ。芸術=artの形容詞であるartificialが「人工の・模造の」という意味であることから分かるように、芸術とは『人の手によって作り上げられたもの』にのみ用いることができる語だ。また、artificeという名詞形が「工夫・考案」という意味である事から分かるとおり、『人の意図』が込められていない物に芸術という言葉を用いるべきではない。

一方、博物館の収蔵物にはそのような『意図』を必要としない。古代の生活道具などには当然、造った人の工夫が凝らされてはいるものの、それは道具を「作る事」を目的とした工夫ではなく、その道具を使って生きる為の工夫である。つまり、博物館に収蔵されているものは、「生きる為に成し遂げたものの痕跡」なのだ。したがって、収蔵品は「アリ塚」や「鯨の剥製」など人造である必要すらなく、広い意味で「生」を定義すれば、鉱物や空気すらも収蔵物としての資格を持ちうる。

 

本作品の主人公は痕跡の保存に魅せられた男である。ある小さな町に仕事にやってきた男は、形見の蒐集に執念を燃やす老婆とであい、出迎えにやってきた少女たちと共に博物館の建立に携わることとなる。

物語は静かで穏やかな序盤から、村上春樹的な展開を経て、そして小川洋子らしい結びへと、実に薄気味悪く・美しく流れる。人の生きた証という普遍的なテーマを扱っているにもかかわらず、小川洋子らしい独特の世界観のため、他の作品とは切り口が異なり、実に面白い。このようなゴシック的な世界を描かせると、この人の怖さと美しさのバランス感覚は突出していると思う。

 

「博士の愛した数式」しか読んだ事のない、小川洋子ビギナーにはなかなかハードルの高い作品だが、「薬指の標本」なども既読の馴染み客にはかなりお勧め。蟲惑的で秀逸な作品です。

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