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ハンコック

監督:ピーター・バーグ/ 原作:/ 80点

■なるべくPV範囲を逸したネタバレは無しの方向で書きます。っていうかレンタル屋のPVはネタバレしすぎ。それよりは抑えてあると思います。

 

ハンコックはここ最近流行っているアメコミヒーロー物....のような作品である。実は元ネタとなるアメコミは存在しない。完全なオリジナル脚本を映画化したものだ。原作のタイトルは「Tonight, He Comes」。「今夜、奴が来る」って所か。同じウィル・スミスが主演の「I am Legend」のタイトルがめちゃくちゃ秀逸だった(原作を読まないと理解できないけど)のと比べると、正直、そのタイトルはどうなの、って感じ。もっとも原作を読んだら感動するかもしれないが。

ウィル・スミス演じるハンコックはいわゆるスーパーヒーローである。怪力、不死身、目にも留まらぬ速さで空を飛ぶ。そのわりに酒のアルコールは人並みにまわるようで、そのあたりはご愛嬌か。ところが、ハンコックはその馬鹿力を制御する気が無く、道路を壊したりビルを破壊したりと、人を助けたりする代わりに、常々とんでもない被害を引き起こしてしまう。ヒーローの日常という視点は面白いが、既にMr.インクレディブルなどでも散々使い古されたネタであり、本作の魅力のコアはそこではない。

物語前半、ハンコックに命を助けられたあるPR業の男は、お礼に彼を「良い人」にしようとPR作戦を開始する。ここまではTVのPVで再三流れているのでばらしてもよいだろう。しかしこの後の急展開については絶対ばらしてはいけないところなのに、レンタル屋のPVには流れていた。オイオイと思ったので、ここには書かない。

 

さて、様々なレビューサイトで散々な評価を受けているという、件の後半部分だが、baristaはアリだと思う。というか、後半の急展開が無ければ、この映画を撮った意味は無い。前半の勢いで盛り上げても、単にスーパーマンもどきが一人増えるだけで、この映画を唯一無二のものには出来なかったはずだ。

あるサイトではこの後半部分を「強いアメリカ」的な世界情勢の縮図ではと語っていたが、さすがにそれは穿ちすぎだろう。人の生き方・価値観、ボランティアの精神、そういったヒューマンドラマを重視した作品だと思う。

明らかに不満が出る点は後半の爽快感の無さだろう。ヒーロー物でありながら、いわゆる「強大な悪」が登場しないため、ヒーローと化してからのハンコックの活躍が地味。もっと活躍が見たかったという気分になるはずだ。一方、「強大な悪」を出してしまうと、エンディングに向かうストーリーに破綻が起きる、あるいは「自己犠牲」なんていう安易な着地点を迎えることになるので、この爽快感の無さは不可避であったとも言える。ヒーロー映画の良さを諦めて、ドラマを採った、というところか。

 

細かい演出に関してはもう一工夫欲しかったところ。奈落の前には活躍が欲しいし、「あの人の選んだ道」の納得できる理由も欲しい。全体の構成は悪くないが、どうも流れがよくない。それに、最後の「月」は明らかな蛇足だろう。安いホームドラマかと思った。公開が遅れた理由は編集に悩んだせいではないかと邪推してしまう。

 

映像はまずまず。どこかに「CGが酷い」と書いてあったが、自分は特に気にならなかった。しっかりハンコックというヒーローを現実世界に「立たせて」いたと思う。自然でコミカルでよかった。ただし、フィルム全体の印象は古い感じ。全体にグレインが乗っかった感じで、明るい場面ですらややノイジー。どちらかというとノスタルジックな映像に見える。撮影は「I am Legend」より前だったとの事なので、技術的な理由かもしれないが、アニメっぽいスーパーヒーロー物にならないよう、わざとそういう演出をしているのかもしれない。個人的にはダークナイトのようなくっきり鮮やか滑らかな映像が好きなので、ちょっと残念だった(って、アレは特殊例だけれど...)。音響もまずます。それなりに良かったけど、特筆するほどでもなかった感じかな。

 

ってなわけで、あんまり褒めてないみたいだけれど、オススメ度80点。誰が見てもどういう見方をしてもかなり面白い。でも、誰が見ても満点ではないだろう。でも、良い映画です。間違いなく。baristaは見る前の期待度が高すぎたせいで辛口になってる可能性アリ。

 

 

最後に、この後ろのコメントだけはレンタルビデオ屋で流れていたPV並みにネタバレなので、見ていない人はここで確実にブレーキ。